数値がすべてを支配する
リーグ優勝が決まった直後、栗山英樹監督は祝福を受ける度に、こんな言葉を残している。
「オレは何もしていない。一切口出ししていない」
監督、いくらなんでも謙虚すぎるでしょう—そんな声が漏れてきそうだが、あるフロント幹部は、栗山監督の発言を、このようにやんわりと肯定してみせる。
「栗山さんは本当に何一つ要求してきてないですよ。その意味では、確かに『何もしていない』(笑)。彼はウチのやり方にとことん惚れ込み、日本ハムのチーム作りを誰よりも一生懸命に勉強し、実践してくれた。その結果がリーグ優勝に結びついたわけです」 開幕前の評価は、絶対的エースが抜けた「中堅チーム」。引退以降、一度もユニフォームを着ていない新人監督の就任は、「無謀」と揶揄された。なぜ優勝できたのか。当事者たちがその秘密を明かす。
数値がすべてを支配する
リーグ優勝が決まった直後、栗山英樹監督は祝福を受ける度に、こんな言葉を残している。
「オレは何もしていない。一切口出ししていない」
監督、いくらなんでも謙虚すぎるでしょう—そんな声が漏れてきそうだが、あるフロント幹部は、栗山監督の発言を、このようにやんわりと肯定してみせる。
「栗山さんは本当に何一つ要求してきてないですよ。その意味では、確かに『何もしていない』(笑)。彼はウチのやり方にとことん惚れ込み、日本ハムのチーム作りを誰よりも一生懸命に勉強し、実践してくれた。その結果がリーグ優勝に結びついたわけです」
「日本ハムでは、あらゆる面で監督に決定権がないからね。コーチ人事も、選手の獲得も、ドラフトも、一軍と二軍の入れ替えすらフロント主導で行いますから。栗山監督は、そこまでを事前に理解した上で監督を引き受けてくれる人物だった、ということでしょう」
日本ハムの監督に必要な適性は、「日本ハムの一員になりたい」という熱意と、「爽やかさ」なのだという。
では「何もしない」監督の下、日本ハムはどのようにして下馬評を覆し、混戦のパ・リーグを制することができたのか。
藤井氏は、「ファイターズは、監督が変わったくらいでは弱くなるはずのないシステムを持っているから」と前置きをした上で、こう続ける。
「監督だけじゃないな。ファイターズの強みは、何が変わろうが、ブレない軸を持っているというところにあるんです。その『軸』とは、根拠あるスカウティングにより獲得した選手を、自前のシステムで育成する、という一点に尽きます」
日本でもベストセラーとなった『マネー・ボール』(マイケル・ルイス著、ランダムハウス講談社刊)で描かれた、「安打より出塁を重視」「盗塁・犠打は評価しない」などの、全く新しい選手の査定基準を参考に、’05年、約1億円の予算を投じて構築された。
当時球団社長だった藤井氏や、現チーム統括本部長の吉村浩氏が中心になり作られた「BOS」は、’06年、’07年とチームを史上初のリーグ2連覇に導くなどの成果を上げ、今ではロッテや巨人など、「真似をしている」(藤井氏)チームも増えてきた。しかし、
「BOSによるデータ解析がすべての基準になるので、監督にも、ある意味オーナーにも人事権は全くない。現状で日本ハムほど、このシステムを徹底しているチームは他にはないでしょう」(スポーツライター)
という指摘もあるように、日本ハム式のチーム作りは、様々なしがらみを抱えた他の球団では、簡単には移植できないほど洗練されている。
事実今季も、日本ハム以外では考えられないような出来事が多く見受けられた。
例えば開幕戦、斎藤佑樹の開幕投手と並んで、栗山監督が仕込んだサプライズが、「2番・稲葉篤紀」だった。しかし、この「奇策」はわずか6試合で、フロントから止められてしまった。
「打率を見ると、『2番・稲葉』は3割4分8厘と当たっている。単純な成績だけ見れば成功に思えるでしょう。だがチームは3勝3敗だった。戦犯は稲葉ではなく、開幕から6試合で1安打の中田翔と5番・スレッジの不振にあることは明らかでした。でも配置換えされたのは稲葉。ポイントゲッターの彼を5番に置いたほうがいいと、フロントがデータを根拠に、監督に修正を促したんです」(球団関係者)
特に稲葉は、3月・4月の月間MVPに選ばれる活躍をみせ、栗山監督がこだわった「4番・中田」の大不振(前半戦打率2割2厘)を見事にカバー。稲葉はその後も主に5番に座り、シーズンを通してMVP級の働きをみせた。
この件で特筆すべきは、フロントの対応の早さだ。
これは嘘だゾ
余計なことはする
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